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(Since 2009-05-05)


砥峰火入れ観察会

2009年4月11日に 砥峰高原 で行われた火入れを紹介します. 日々粗忽successionの砥峰の山焼きや 兵庫県神河町の 砥峰高原山焼き にも, 同じ日の記録があります.
草原の維持管理を目的として,毎年春に砥峰高原の火入れは行われている. この火入れによって,草原が維持されている. 何度か砥峰高原には行っていたが,この場所での火入れを見るのははじめてであった. ネット情報によると2008年の参加者が約2000人とのことであったので, さぞ盛大に行われることであろうと思い,期待を大きくして行った.



火入れ自体を紹介する前に,まずは周辺環境から. 火入れをする前には,防火帯を作っておく必要がある. 周辺に飛び火すると山火事になるので,防火帯として,約2mぐらいの幅でススキが刈り払われている. 火入れの燃料はススキとトダシバを主体とした草原の草なので,これらの燃料をあらかじめ除去しておく. そうすることで,それ以上の燃焼を防ぐことができるのだ. 刈られた草が防火帯に残っていると意味を成さないので,刈られた草は火入れする方に集められている.

消火用の水が入ったポリタンクとそれを撮影する草原の研究者. 防火帯だけでは延焼を食い止められないことがあるので, 水が入ったジェットシューターという移動用消火器をがたくさん必要である. それに入れる水を軽トラックで運んでいた. また,消防団の人もたくさんおられた.

「ほでくぼう」という伝統的な消火用の器具. 稲わらを束ねて作るとのこと. 以上のように,防火帯の設置,当日の消火部隊,またその他の裏方さんたちの人の努力があって, 火入れをすることができる.そして,それを見ることができる. 本当にお疲れさまです.そして,ありがとうございます.

水の流れは上から下と決まっているのとは逆に, 上からの強い風がない限り,火の方向は基本的には下から上に向かう. また,燃焼時間が長くなると下方への延焼もありえるが, 草原での火入れでは,燃料が比較的少ないため,燃焼時間が短いため,これもほとんど無いため, 点火地点から下にはなかなか火が届くことはあまりない. そのため,点火地点より下になる谷の部分には森林が残っている. あと,火入れ時に残雪があったり,水分条件など関係するのだろう.

谷には森林が残っている(上の説明を参照).

アカマツのおこげ. 地形的な要因で樹木が残るほかに,草原の火入れでは, たまたま火入れをすり抜けて大きくなることができた樹木がある. 燃料が比較的少ないので,草原の火入れは一旦太くなった樹木を燃やすだけの火力がない. そのため,一度大きくなってしまうと表面だけは焦げるのだが,燃えることはなくてさらに大きくなることができる.

このアカマツのおこげは1mちょっとの高さまでだった.ススキの草丈とほぼ同じだ.

火入れによってできた樹形. 一旦大きくなっても,1年生の枝は細いため火入れによって燃え尽きたり枯れてしまうのだろう. この場所では,向かって左側と右側では段差があって,右側が高い. 左側の斜面で火が届きにくい部分で,コナラなどが偶然に成長したのだろう. しかし,右側からの火の影響を受けるところにさしかかると,1年生の枝が火入れにやられてしまう. 1年生の枝がやられるのを繰り返し,写真のような樹形が出来上がったのだろう.


斜面の向きによって,ススキなどの倒れているところと残っているところとがある. 冬の積雪状態を見たわけではないので,以下は推測. 北向きの斜面では降雪量が多かったり,雪の解け方が遅いため,積雪量が比較的多くなる. そのため,雪の圧力が大きくなるのと,下方への移動が起こりやすくなる. これに伴って,ススキなどが倒れやすいのだろう. これに比べて,南向きの斜面では積雪量が少ないため,倒れにくいのだろう.

やや北向きのススキがきれいに倒れているところ.

やや南向きのススキが倒れずに残っているところ.


さて,ここからが火入れ本番. まずは,点火. 一気に下から焼いてしまうと火の勢いを調整できず,周辺への延焼の恐れがあって危険なので, はじめは斜面上部を少しずつ焼いていく. それによって,防火帯を広げていく.

はじめの方は,煙がくすぶる程度.

はじめちょろちょろ.

防火帯ができてくると,斜面中部から火をつけるようになる. 斜面の中部から火を点けると,燃え方が激しくなる. 煙の色は,はじめはススを多く含んでいるためか,黒い. 燃焼が進むと,だんだんと白い色になる.

火入れ中盤.だんだんと炎が激しくなる.

点火する人は,上から下へ火をつけながら降りてくる. そのため,燃えているところはV字形になる.点火位置は複数あり,隣の燃えているところとは逆V字形になる.

ついに,斜面の下から点火がはじまる.火の点火とともに炎が一気に広がる. バチバチという音も聞こえる.

人のいるところに近くでも火入れをするので,赤外線による輻射熱が伝わる. 近くにいた人によると,皮膚が痛かったそうだ. しかし,燃焼による上昇気流が発生しているので,周りから炎に向かって,つまり自分から炎に向かっての風が吹く. この風が結構強かったのは,びっくりした.

これも,火入れ終盤.煙が当たり一面を被っている. 炎のオレンジ色を映して煙の色もオレンジ色,太陽の色も夕焼けとまではいかないまでもやや赤みを帯びていた.

火入れの最後.屋台の前でも燃え盛る.でも,これが終わると急に何も無かったかのように,静けさが訪れた.


火入れ前はこんな感じだった.


火入れ後には,前面が真っ黒けになった.わずか1時間30分ほどの出来事だった.


以下,そのときの様子. ショウジョウバカマの花

ショウジョウバカマのつぼみ.

ショウジョウバカマの葉.紅葉しているものと緑色のもの.もともとはどちらかの葉があって,もう一つはそのクローンだろう.ちょうど葉の先端にあたる距離に次のショウジョウバカマの中心がある.

ツチハンミョウの仲間.

タムシバの花.

タムシバの花.

クロモジの花.

ミツマタの花.

木道で遊ぶ人.滑り台と勘違いしている模様.

木道で遊ぶ人とそれを見守る人.