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情報の一元化と活用

Since on 2006-05-21

| 何のために記録するのか? | 記録が活用できない | 情報を一元化して記録する | 一元化した情報を活用する | 実体験から得た注意点

何のために記録するのか?

研究を遂行するうえで、記録する機会は一日のうちで何度もある。 あると言うより、しなければならないことが多い。 そうでなければ、研究の作業が進まなかったり、後戻りするだろう。 具体的には記録をするのは、次のようなときだ。 調査方法を考えるとき、論文を読んだとき、新たな解析手法を考えたとき、論文の構成を考えるとき、いいアイデアが浮かんだとき、学会発表をしてアドバイスをもらったときなどなど(*1)。

このように日々の研究のなかでの記録には大きく分けて二つの目的がある。

  • 一つは物事を理解するため。
  • もう一つは後々の自分への備忘録として。

    一つ目の物事を理解するというのは、人間の脳内における情報処理や一時記憶には限界があるためだ。 紙をはじめとした記録媒体上で情報を処理することで、脳内だけでは理解できない物事を理解が可能になる。 つまり、図や文章として記録する過程で物事を理解するのである。

    二つ目の備忘録としてといのは、人間は常に物事を忘れるということによる。 その時は分かっていたつもりであっても、すぐに忘れてしまう。 例えば、プログラミングで関数を作成した場合、関数の使い方や途中の変数の意味は、作業から遠ざかって1週間もすれば完全に忘れ去っていることがほとんどである。 そんなときは、プログラムの途中に「コメント」という備忘録として書き残す。 これによって、後々になってもプログラムの修正ができるのである。

    また、記録の一つ目の目的の「理解する」ことでも、その場限りだけで終わるということはほとんどなく、後から見直すことで、より理解が深まるだろう。 場合によっては、理解した物事を忘れている場合がありえる。 そんなときには、記録を保存しておくことは重要である。 こういった意味で一つ目の理解するというのと備忘録というのは切り離すことができない。

    上記のような記録するという作業は、研究をする上で重要なのだが、せっかくの記録を活用しなければ意味が無い。 しかし、往々にして記録事体の方法や記録したことを活用する方法が良くないために、十分に活用しきれていないことがよくある。


    記録が活用できない

    大学時代からずっとそうだが、パソコンが目の前に無い場合はノートにまず記録をとる。 記録の量はその時々によって異なるので、ノートのたまり具合も変化する。 ただ、たまったノートは数年もすれば膨大になる。 その膨大な記録をそのままの形で活用するのは並大抵のことではない。

    まず、記録した情報が見つからないことが多い。 その理由は、情報自体がないという場合と、情報の場所が分からないという場合とがある。 情報自体がないというのは、要はものがないのである。 記録をしたつもりや、記録をした紙を紛失したとかである。

    次に、情報の場所が分からないということがある。 記録をしたのは確かであるものの、ノートのどこにあるのか、あるいはどのノートにあるのかを忘れてしまっているということである。 いつごろの記録かが分かっていれば、記録した日付を頼りにすればいい。 ただ、記録したときから日時が経過するにつれて、記録した日時はあいまいになってしまう。

    また往々にして、探しても探しても記録が見つからない場合は、情報自体がないのか、情報の場所が分からないのか、どちらなのかすら分からなくなってしまう。

    このような事体に陥らないようにするには、何らかの対策が必要である。


    情報を一元化して記録する

    ここでは、情報の記録を一元化することと、その後の活用方法についてまとめる。 まずは情報の一元化である。

    記録した情報が見つからないことへの対策は、記録する場所を一つだけにしてしまえばよい。 記録する場所が一つであれば、探す場所は一つしかないからである。 情報を一元化することが決まれば、次は一つだけの記録する場所はどこにするかを決めなければならない。 基本的には記録するものはノートが良い。 ノートは場所をとらず、あとはペンがあればいつでもどこでも気軽に記録がとれる。 ということは、常に持ち歩くことができるので、 万が一、ノートが手元に無いときは身近にある紙に記録をとって、あとでノートに貼り付ければよい。

    このような便利なノートであるが、欠点がある。 ノートの欠点は情報を探し出すのに時間がかかるということである。 目で見て探し出さなければならないからである。 ノートに目次を付けておくと少しは後で探しやすくなるが、ノートが何冊にもなってくると目と手を使って探すというのには、時間的な限界がくる。

    そこで、パソコンに情報を入力することが大きな意味を持ってくる。 パソコンに入力しておけば、探し出す手間が格段に減る。 パソコンへの入力はワープロソフトでもかまわないが、テキストエディタで入力するのがお勧めである。 テキストファイルとして保存することで、ファイルの大きさはあまり大きくならないし、検索速度が速い。 また、編集作業が容易にできるという利点もある。

    ただし、パソコンに入力した情報の保存方法には十分気をつけなければならない。 ハードディスクはいつ壊れるかわかならい。 幸いにして、これまで自分のハードディスクが壊れた経験はないが、ハードディスクが壊れたという話はたびたび耳にする。 パソコンのハードディスクは、消耗品であると考えておいたほうがよい。

    そこで、複製の保存を常に置いておくようにしたい。 できれば、毎日、少なくとも一週間に一回ぐらいは複製の保存をする。 これを怠って、保存した情報がなくなってしまってから後悔しても後の祭りである。


    一元化した情報を活用する

    さて、ここからはどのようにして活用するかについて述べる。 ただ単に一元化してテキストファイルにして、テキストエディタで検索するだけでも十分な利点はある。 しかし、これだと単純にずらずらと並べただけの情報に過ぎない。 さらに活用しようとすれば、情報を区分して見やすく整理することが必要である。

    情報の記録形式を Changelog 形式にさえ合わせておけば、 chalow というプログラムを用いてHTML化して、日付単位・月単位・項目単位などとさまざまな単位で整理することができる。 HTMLにしたものは、インターネット上から発信することができ、自分と他人にとっての記録として活用可能だ。 また、 clsearch という秀丸エディタのマクロを使用すれば、HTML化しなくても記録の項目単位で検索可能である。


    実体験から得た注意点

    最後に、実際の体験談・失敗談を交えて、注意点を述べたい。

    まずは、パソコン依存になり過ぎないことである。 個人差はあるだろうが、あまりにパソコンとにらめっこしすぎると視力の低下につながる。 また、指の腱鞘炎になることがある。 適度な度合いでパソコンとノートを使い分けることが肝要である。

    パソコンのバックアップは既に述べたが、ノートの保管にも気をつけて欲しい。 一度だけノートをなくしたことがある。 数頁分がまだパソコンに情報を入力していなかったため、その情報は二度と戻ることはなかった。 ノートはパソコンの情報を同じく大切に保管するべきであった。

    また、ノートの情報はこまめにパソコンに入力する。 これは、ノートをなくしたときの対応になるとともに、情報が多くなりすぎて、テキスト化するのが億劫になるのを防ぐのにも役立つ。 ノートに記録してから時間がたつとパソコンへの入力が面倒くさくなる。 入力すべき量が増えるとさらに面倒くささは増し、悪循環に陥ることがある。 これを防ぐには、できるだけこまめにパソコンへ入力してほしい。

    この文章を読んで、情報を一元化して活用しようと思った人は今すぐに始めましょう。 入力すべき情報が多くなりすぎて、やる気がなくならないうちに。


    参考ページ

    *1 学会が終わってから記録する内容は、国立環境研究所の竹中さんの宴のあとに:学会が終わってからやることを参照のこと。